気持ちや意見を伝えるのに言葉を使うだけでは不足する．言葉を適切に紡ぐための針と糸が必要だ．そう，作文のための技術が必要なんだヨ．
というわけで，理科系の作文技術 (中公新書 (624))を一通り読み終わったので感想をば一つ．
この本を読み終わるまでに通算で丸2日ほどかかった気がする．(小分けにして1ヶ月程度か)言葉遣いに無駄が無いせいで，一つ一つの文の骨子を拾い漏らさないよう，神経をとがらせてゆっくりと読んでいったからだ．といっても，ページを戻したりして読む必要はほとんどなかった．自分が読んだパラグラフまでで，それまでに読んだ内容が理解できるように書かれていたからだ．
この本は仕事で，他人に読ませる文章を書く人にとって必読の書といっていい．当然ながら，文章を書くために必要なすべてのことがらをこの本から得ることはできない．すべてを網羅すれば新書ではなく辞書になってしまうだろう．だがこの本には，
- 明快・簡潔な文章を書く必要性
- 文章を書く際の心構え
- 準備・作業・校正
- 実際の文の組み立て・文章を構成するファクター
などについて，著者の説得力のある意見とともに記述されている．これを読んで，すぐに著者と同じくらい明快で簡潔な文章が書けるようにはならないだろう．しかし，実際に文章を書くとき，書いた一文を見て意味が通っているか；文と文との流れは適切か；パラグラフとして成り立っているか，などについて経験とともに上達するための基礎的知識が習得できると思う．
