とはいえ,論文のために作られるプロトタイプと,実用に耐えうるソフトウエアの差は大きい。実用ソフトウエアは,想定外の操作でも停止したり誤動作したりしないようするためのデータ・チェックやエラー処理などを至るところに実装しなければならない。エラー処理が本来のロジック部分より大きくなることも多い。利用者向けにわかりやすく解説したドキュメントも必要だし,普及のためにはユーザーの質問に答えたり,バグを修正したりといったユーザー・サポートもこなさなければならない。
そして,これら普及のための努力はいずれも全く論文の材料にはならない。すなわち「日本の大学では業績として全く評価してもらえない」(大阪産業大学 経営学部助教授 羽室行信氏)。意識を変える,というレベルではない。
Namazu,quickml,gonzuiなどのオープンソース・ソフトウエアの開発者であり,現在は企業に勤務している高林哲氏は「大学では論文を出すことが目的で,プログラムは簡単なプロトタイプを作って終わり。しかし,作り込めば世の中にそのまま役立つものになる」と,大学がもっとオープンソース・ソフトウエアを生み出すべきと指摘している
最先端のプロトタイプを作り込めば,実用可能で魅力的なソフトウェアになると.うむむ.