こもろぐ @tenkoma

What We Find Changes Who We Become -- Peter Morville著『アンビエント・ファインダビリティ 』

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「対話」のない社会―思いやりと優しさが圧殺するもの,読了.

企業内個人の見える企業.

まずはある部分に注目して連想したことをつらつらと.
p.194,「強い個人主義」と「弱い個人主義」より(強調は引用者による)

竹内靖雄は「自己利益を最大限に求める」という個人主義の根っこに着目して,西洋近代的個人主義である「強い個人主義」に対して日本型個人主義を「弱い個人主義」と呼んで両者の異同を比較している.

強い個人主義
  1. 利益の追求に集中する.
  2. 他人との関係において攻撃的で,競争指向的になる.
  3. 市場を利用する.すなわち,市場ゲームの個人プレーヤーとして生きようとする.
弱い個人主義
  1. 不利益の回避を重視する.
  2. 他人との関係において防衛的で,競争回避的になる.
  3. 集団を利用する.すなわち,個人はまず集団に所属し,その集団が市場のプレーヤーとなる.

ここの部分を読みながら僕は,企業の社会に対する見通しの良さについて次のような連想をした.
2つの企業モデルがある.1つ目は企業に属する個人に対して,企業内個人としての,社会全体への情報公開を推奨する企業.情報公開にはガイドラインが定められていて,個人がガイドラインを参考にするが,最終的に公開するか否かを判断するのは個人.もちろん責任も個人に伴う.2つ目はその逆で企業内個人が社会に対して情報公開することに消極的な企業.企業内の個人で名乗らない,プライベートな(個人ではパブリックだが)情報公開とは別の次元で.
情報公開を推奨する,しないの理由はさまざまであろうが,前者が推奨する理由は,

  • 情報公開してもデメリットがほとんどない.
  • 情報公開のメリットとデメリットを比較してメリットが大きくなることが期待して.
  • 情報公開のリスクについてマネジメントができる.

といったところだろうか,後者が消極的な理由は,

  • 情報公開したときのデメリットしか考えていない.
  • 情報公開のメリットとデメリットを比較してメリットが大きくなることが期待できない.
  • 敵に塩はあたえたくない
  • 情報公開のリスクについてマネジメントできない,したくない.

こういったメリット・デメリットを考えた上で,企業内個人による情報公開を推奨する企業は,しない企業と比較して,メリットが上回ったときに,「情報公開による直接的利益+個人の見える見通しの良い企業という評価」というアドバンテージを得る可能性があると思う.

もちろん情報公開ができない領域もあることを認めなければならない.

風通しの良い社会にしたい!

さて,この本を読んだ感想を.
著者は本の最後(p.205)で,言葉の持つ力について語る.

われわれが死や救済,愛や憎しみ,信頼や裏切りに直面するとき,言葉は絶望的に無力である.…(中略)…だが,だからこそ,私は無力な言葉をさらに無力にしたくはない.言葉のもつ一抹の「威力」を信じたい.

僕もこの考えに同意する.本の前半部分は,弱者が言葉を信用しなくなり,街には意味のない管理標語・放送があふれている,といった,言葉の力が変形している例を挙げることに終始している.表面的な意味を軽視して,腹の探り合いばかりというのも実感がある.しかしそういう風に言葉を使ってきたのも実は自分自身なのだ.
言葉を大切にし,異質な他者との<対話>を通じた理解を大切にし,風通しの良い社会に徐々に変化することを願って.*1

*1:感想,まとまんねー,言葉ことばコトバ